千葉和彦税理士事務所 宮城県塩釜市玉川1-2-40
贈与された方は1年で忘れる!
 (平成24年12月)
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いよいよ団塊の世代が65歳にさしかかり、事業承継の相談が急に増えてきた。
会社存続のために避けては通れないことではあるが、後継者が決まらない(いない)というところも少なくない。

また後継者がいても、自社株の評価が高くなりすぎていて、いざ贈与しようとすると、多額の税金が発生し、贈与も難しいケースがほとんどというように、事業承継に関する課題は多い。

そこで我々実務家が提案するのは、現社長が退職し、後継者に社長を譲り、その際、しっかり退職金を取ってもらうことで当期利益を大きく引き下げ、翌期株価が下がったところで、後継者に贈与してもらう方法だ。

大変シンプルな対策のように見えるが、その効果は大きい。

しかし、せっかく株価が下がったにも関わらず、いざ実行という段階で踏みとどまる社長も多い。
それは、何故かと言うと息子(娘)は、確かに自分よりはるかに若いとはいうものの、事故等で自分より先に亡くなったらと、ふと脳裏を横切るからだ。
もしそうなった場合の相続権は息子さんの奥様とその子どもにある。会社の株だからと言っても、もちろん例外はない。

会社で売渡請求ができるように定款を変更したり、あるいは、その時に備えて息子さんに遺言を書いておいてもらう方法もあるだろうが、常に書き換えが可能なことなど考えると完璧とはいえない。何とかうまい方法がないものだろうかと私自身も常々考えていた。

先日たまたま「信託」という方法で、事業承継の実践を数多くされている先生の話を聞く機会があった。
その話を聞いたとき、まさしく、これからはこの方法の活用だと思った。
「信託」と言うとすぐに「信託会社」を思い出す人が多いと思うが、この場合は、信託会社に頼むわけではない。

例えば後継者を長男という前提で説明しよう。
自社の株式を自分に委託し、受益者を長男にする方法だ。すなわち、委託者、受託者は現社長、受益者は長男とする方法だ。長男がもし先に亡くなったら、次の受益者を次男や他の人に定めておく方法だ。

税務上は、真の所有者は受益者になるので、その時点で、贈与税が、かかるが、社長に相続が発生しても相続税はかからない。

受益者変更権は親が持ち続ける形にしているため、長男は常に襟を正して、経営に当たっていかざるを得ないという効果も期待できる。

確かに生前贈与は相続税対策として大きな効果を生むのですが、贈与した方は顔を合わせれば、いつまでも贈与したことを思い出し、贈与され方は一年もすれば、忘れてしまうのが世の常だ。
そのような気持ちのすれ違いから、贈与後、関係がギクシャクしてしまう親子も多いようだ。

しかし、この「信託」の方法をとれば、受益者変更権は親が持ち続けるわけだから、長男も忘れるわけにはいかず、そのことを意識した行動を取らざるを得ない。
そのため、贈与前に増して関係が良好になったケースがほとんどのようだ。

まだまだ活用されているケースは少ないようだが、今後この「信託」とう方法は、スムーズな事業承継に一役買うことができるのではないだろうか?

とかく税金ばかりに目がいきがちだが、これからはこの「気持ち」を考えた対策がますます重要になると思う。

今年も残すところ一ヶ月を切った。師走で忙しい月ですが、体調管理を万全に乗り切りましょう。

2012年11月27日(水) 著 者   千葉  和彦 

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