千葉和彦税理士事務所 宮城県塩釜市玉川1-2-40

相続放棄
(平成28年6月)

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 先日、下記のような質問がありました。

 父が亡くなりました。預金(100万円)よりも借金(1000万円)の方が多いので相続の放棄を考えています。

しかし、父が生命保険料を負担し、被保険者となっている生命保険契約があって、長男である私が死亡保険金3000万円を受け取ることになっています。

相続を放棄するとこの保険金を受け取れなくなり不利になるので相続の放棄をしないようにと考えています。どうすれば良いでしょうか?

 さて、その答えは・・・。お父様が契約者で保険料も支払っていて、ご自分にかけていた保険金を受け取るわけですから相続財産ですね。放棄したら受け取れなくなりますよ。という答えが返ってきそうですが、もちろんこれは、間違っています。契約者と被保険者が同一の場合、受け取る死亡保険金は死亡した人の財産ではなく、保険金受取人の固有の財産となります。

つまり保険金は民法上、相続財産ではないので、相続放棄をしても受け取ることができるのです。めでたし・・めでたし。しかし、この相続放棄・・思わぬ落とし穴がある場合があるのです。

かなり昔のことになりますが、30代の女性の方が乳飲み子をおんぶしながら事務所に相談にこられたことがありました。

話を聞くと、ご主人が大きな借金を残して交通事故で亡くなったとのことです。商工会さんに相談したところ「相続放棄」という方法を教えてもらい助かったと言いながらも、何故かそわそわと落ち着かない様子でした。

「何かほかにご心配事でもあるのですか?」と聞くと、言いにくそうに「急に主人を亡くし、途方にくれています。これからこの子を抱えてどう生きていけばいいのか不安でいっぱいです。主人が少し保険に加入していてくれたのですが、それだけ受け取ることは虫が良すぎるのでしょうか?」と遠慮がちに話された。「奥さん安心してください。保険は受取人固有の財産ですから相続放棄をしても受取れます。」と私が答えると、少し安心されたようでした。

その後奥様から無事相続放棄の手続きを済ませた連絡がはいり、一安心したが、後日ご主人のご両親に債権者から請求があり、ひとり息子の借金のことを死んだ後に知らされた上、それを払えと言われて大変ショックを受けられていたという。

実はご両親も同時に相続放棄をしておけば何も慌てることはなかったのです。第一順位の相続人が放棄した場合、第二順位、第三順位の相続人に相続権が移ります。このケースの場合奥様は自分たちだけ相続放棄をするのでなく、ご主人のご両親にも相続放棄をしてもらうように話しておくべきだったのです。

もちろん相続放棄の手続きは、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に行うこととされていますので、先順位の相続人が放棄したことによって、次順位の自己が相続人になったことを知った時から3か月以内に相続の放棄を行えば良いことにはなりますが、第一順位の相続人が放棄するときは第二順位の相続人に話しておくべきでしょう。

このケースは大事には到りませんでしたが、税理士になりたてのころの私の忘れられない案件の一つになりました。

2016年5月27日(金) 著 者  税理士 千葉 和彦

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