千葉和彦税理士事務所 宮城県塩釜市玉川1-2-40

上手な事業承継・・黒字経営
(令和2年10月)

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  ずいぶん前の話になるが、ある弁護士の「事業承継セミナー」を受講し、衝撃を受けたことを思い出した。その弁護士が「所得が4000万円も出ていない会社は無理やり子供に継がせる価値はない。」と大胆に言い切っていたからだ。4000万円という金額は、十数年前まで高額所得法人として公表される場合の基準だったので、その数字を参考にしたのだろうが、それにしてもとんでもないことを言う弁護士だなと思った。


  しかしそう思いながらも半分同意していた自分に気づいた。私が一理あると思ったのは長年、税理士とし様々な企業を見てきたからだ。しっかり儲かっている会社にしておかなければ当然、自由に使えるキャッシュがない。先代に退職金も払えないし、再投資資金もないから借入金がまた増える。これでは事業承継はおろか、会社の存続すら危ぶまれる。私は4000万円以上の利益はともかく、まずは黒字の会社であることが事業承継の最低条件だと考える。もし現在赤字なら、早急に黒字化を図ることが重要だ。さすがに赤字で借金まみれの会社を誰も継ぎたいとは思わないだろう。


 ではどのくらいの黒字を出せば良いのかと聞かれる方がいるが、それに対しては「いくらでもよい」と答えている。今赤字体質なのであれば、会社の現状を冷静に分析し、黒字になるための知恵を絞り、地道に実行していくことが先だ。


  また「しっかり利益を出し、内部留保を高めよう。」とはよく言われる言葉だが、決して鵜呑みにしてはならない。中小同族企業は、社長一族と会社の税金を合算して考えなければならない。そのためには、個人、法人合わせて最も税負担の軽い分岐点を常に考えながら経営しなければならない。


  若い経営者の中には、役員報酬を異常に低くして、会社に利益を多額に計上して自慢している社長がいるが、勘違いも甚だしい。会社が順調に進んでいるときはそれでも良いが、今回のような外部環境の激しい変化で業績が急激に落ち込んだ時などどのように対処しようとしているのか考えてほしい。


  含みの簿外資産の保険や倒産防止共済も有効だが、いざとなれば社長がいつでも資金を拠出できるようでなければならない。それには普段から役員報酬をしっかり取り、資金を貯めておかなければならない。役員報酬は生活費でなく、経営戦略上の数字である。「うちには力強い銀行さんが付いているから大丈夫」と言う社長もいるが、私の経験上、そのような社長ほど、沈むのが早い。確かに、銀行の役割には国民経済の健全な発展に資することとあるが、銀行も利益を追求する企業であることを忘れてはならない。


  現在のように外部環境の変化が激しくなかなか黒字が出せないときは、焦らず、特別融資をうまく活用し、手元資金を潤沢にして、じっくりチャンスを待とう。大変な時ですが、一緒に頑張っていきましょう。







2020年9月24日(木) 著 者 税理士  千葉 和彦