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海外企業と取引を行う際の注意
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国内経済の停滞を背景に、中小企業においても、アジアなどの海外企業に販売したり、海外企業から原材料、部品を調達するというケースが増えています。はじめて海外企業と取引を行う場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
 
設例1 商談会で英語の売買契約書にサインした
 自動車部品メーカーであるA社の社長は、国内の展示会で、米国X社の工具を購入したいと思いました。商談スペースで製品の説明を受けたところ、X社の担当者が「この契約書にサインして欲しい」と英語の契約書を差し出したので、社長は、商品名、値段、支払期限だけを確認し、契約書にサインしました。

設例2 HPを見た中国の会社から注文がきた和雑貨の製造.販売を手掛けるB社の注文ホームページに、中国の大手百貨店Y社から注文依頼のメールが入りましたが、日本の企業としか取引したことがないB社の社長は、取引をためらっています。
今後、海外企業と取引を行う企業が増えることは確実です。しかし、設例1のA社のようにリスクを吟味することもなく、即断で取引を開始することは危険です。
他方、設例2のB社のように、今まで、海外企業との取引経験がない場合には、不安を感じることも多いと思います。いずれにしろ、契約内容を吟味してリスクを小さくすることが必要です。そのポイントは次の3つです

リスクを小さくする3つのポイント
@ 契約書を必ず作成する。
A 契約内容がこちらに有利なものとなるように時間と手間を惜しまず交渉する。
B 契約条件等を理解できないときは弁護士など専門家に相談し理解できるまで検討する。
 
 1.契約書が重要−日本国内の常識は通用しない
 海外企業と取引を行う場合、最も重要なのは、契約書です。もちろん、国内企業同士の取引であっても、必要事項を記載した契約書を作成することは重要ですが、海外企業と取引をする際には、特にその重要性が増します。
海外企業との取引に国内取引での常識は通用しません。国内取引であれば取り決めがなくてもスムーズにいく事項が、紛争の原因となることがあります。

国内取引では常識的であっても、契約書にきちんと定めることが大切です。「書かなくてもわかるだろう」という考えは禁物です。また、あとで自社に不利益な内容であることに気づいても、一旦、契約書にサインをしてしまうと、契約書の内容に拘束されますので、サインをする前に、きちんと内容を理解する必要があります。
設例1で、仮に、A社がサインした契約書に「X社は商品の欠陥について一切責任を負わない」と定められていたとすれば、欠陥商品であっても、A社は代金を支払わなければなりません。
 
 2.売買契約書の注意点
  実際に、海外企業と売買契約を締結する際の一般的な注意点は以下のとおりです。
 ※契約類型や個別事情によって注意点が異なります。
 
@商品の仕様−誤解や紛争の防止に重要
 商品の仕様を明らかにすることは、誤解や紛争の発生を未然に防ぐために重要です。
 簡単な説明で済むものであれば、契約書本文に記載することもありますが、性能や特徴を詳細に記載したり、品質の条件を仕様で定める場合には、添付した別紙に定めることがよく行われます。
A貿易条件−輸送費や保険料などを取り決める
 海外企業との売買では、多くの場合、航空輸送や海上輸送を伴います。輸送にかかる費用、輸送中の保険料などの貿易条件を事前に明確に取り決めておくことが大事です。
 また、輸送中に商品が滅失、破損した場合の扱いについても決めておく必要があります。
B代金支払条項−売りは先払い、買いは後払い
 商品の代金を支払ったのに商品が届かない、反対に、相手が商品を受領したのに代金を支払わないといったことが起こりえます。そのため、売り主から代金先払い、買主なら代金後払いとすることが大事です。
 細かい契約事項も重要ですが、何よりもまず、代金回収、または商品の引渡しに関する取り決めをしっかり行う必要があります。
 こちらが、買主の場合は、「商品の受領.検収後に代金を支払う」と定めることにより代金を支払ったのに商品が来ないという事態を回避できます。
 相手方が代金後払いを受け入れない場合には、「頭金を先に支払い、残金を商品引渡し後に支払う」という条件で交渉することも考えられます。

 こちらが売主であれば、「代金を前払いとする」等の対策をとり、未回収となるリスクを可能な限り低く抑える努力をする必要があります。
 売主であれ、買主であれ、支払方法や、支払通貨を決めることも重要です。為替レートも必要に応じて決めておく必要があります。
  
C保証条項−品質についての責任範囲を明確に
 海外企業から商品を買う場合には、その企業が商品の品質を保証しているか、責任の範囲がどこまでなのかについて確認することが必要です。
 商品を売る場合には、保証内容(何ら保証をしないのであればその旨)を適切に定めることが必要です。

D準拠法−日本の法律に準拠することが望ましい
 国内取引であれば、契約書に記載のない事項について紛争が起こると、日本の裁判所に紛争が持ち込まれ、民法、商法などを適用することにより解決されます。
 しかし、海外企業との取引の場合、外国法が適用される場合があります。例えば、設例1でA社がサインした契約書に「米国ルイジアナ州の法律を準拠法とする」と定められていた場合、ルイジアナ州の法律や判例によって、紛争が解決されることになります。
 外国法の内容が日本法と異なることが多々あるため、日本企業にとっては、準拠法を日本の法律にすることが望ましいといえます。
 
E紛争解決方法−あらかじめ解決手段を決めておく
 紛争解決方法として、裁判と仲裁があります。仲裁というのは、紛争の当事者が選んだ仲裁人が紛争を解決する手続で、仲裁を選択すると裁判はできないことになります。
 契約書では、紛争を持ち込む裁判所または仲裁機関を双方で合意しておくべきです。
 外国の裁判所に紛争が持ち込まれた場合、日本の裁判所では予想できないような判断がされることもあり得ます。
 また、この点の合意がないと裁判に持ち込むことすら困難となることもあります。
 
 
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